長期停滞にどう向き合うか
―― 金融政策の限界と財政政策の役割
The Age of Secular Stagnation
2016年3月号掲載論文
今後10年にわたって、先進国のインフレ率は1%程度で、実質金利はゼロに近い状態が続くと市場は読んでいる。アメリカ経済についても同様だ。回復基調に転じて7年が経つとはいえ、市場は、経済がノーマルな復活を遂げるとは考えていない。この見方を理解するには、エコノミストのアルヴィン・ハンセンが1930年に示した長期停滞論に目を向ける必要がある。長期停滞論の見方に従えば、先進国経済は、貯蓄性向が増大し、投資性向が低下していることに派生する不均衡に苦しんでいる。その結果、過剰な貯蓄が需要を抑え込み、経済成長率とインフレ率を低下させ、貯蓄と投資のインバランスが実質金利を抑え込んでいる。この数年にわたって先進国を悩ませている、こうした日本型の経済停滞が、今後、当面続くことになるかもしれない。だが、打開策はある。・・・
- 何が経済を停滞させているのか
- 長期停滞論と自然利子率
- 長期停滞をいかに説明するか
- 金融政策と財政政策
- 財政政策をめぐる国際協調を
- 杭州サミットの役割
<何が経済を停滞させているのか>
最近の金融危機とリセッション同様に、あるいはそれ以上に驚きだったのは、その回復期に先進諸国と金融市場がみせた動きだった。専門家の多くは、深刻なリセッションの後には、経済はかつてなく急速な回復をみせ、経済生産と雇用は比較的短期間でトレンドレベルへと回帰すると予測してきた。だが、米連邦準備制度理事会(FRB)が大胆な金融緩和策を実施したにも関わらず、アメリカと主要国の経済成長率は予測を大きく下回り、いつもの回復期のような勢いはなかった。米経済が、2009年の議会予算局の予想通りのパフォーマンスをみせていれば、アメリカのGDP(国内総生産)は、現在のそれよりも1・3兆ドル程度大きくなっていたはずだ。・・・
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